2019年3月25日。

1期4年間、最後の本会議で登壇した時に以下のことを申し述べました。

 

 

 

私、竹村ゆういは、議案第12号、平成31年度目黒区一般会計予算について、賛成の立場から討論いたします。

 

討論に入る前に一言。

4年前の初登壇の際、私は会派、政党その他の枠組みに関係なく、区の理事者の皆様、先輩議員の皆様、同期議員の皆様、全ての皆様に敬意の念を抱き、共により良い目黒区を創造していく仲間だと考えております、とそうお伝えしました。

今もその考えは変わっておりません。

時には厳しい目で、時には温かい心で御指導いただいたことに心より感謝申し上げます。ありがとうございました。

それでは討論に入ります。

 

今回の予算案では、目黒区の将来的な児童相談所設置に向けた準備にかかわる予算が計上されています。

1年前の目黒5歳女児虐待死事件を背負っている目黒区として、2度と悲しい事件を起こさないために、強いメッセージと強固な体制づくりが求められます。

 

つい先日、3月19日に政府は児童虐待防止法と児童福祉法の改正案を閣議決定しています。

児童虐待防止法の改正案は、しつけの際の体罰を禁じるものです。

保護者だけでなく、児童福祉施設の職員ら子どもの養育に携わる人が対象となります。

「体罰」の定義は、厚生労働省が今後指針等で具体的に示し、親が子を戒めることを認めた民法第822条の懲戒権の扱いは、施行後2年を目途に検討するとしています。

 

終戦後、長野から目黒に祖父と祖母が出てきて、家を建てました。

戦後の動乱の中、祖父と祖母は懸命に生活をしながら4兄弟を育てている中で、一時期長男である私の伯父さんを近所の知り合いに預けていました。

伯父さんの頭は傷だらけです。

親の気付かないところで子どもが傷つけられていたことを知った祖父と祖母は、子どもを預けている以上仕方がないと自分たちを責めていたと父親から聞かせてもらったことがあります。

 

今の時代、児童虐待が大変に注目を浴びていますが、当時から子どもを攻撃する人は当然のようにいました。

現在の日本では、子育てしている親の6割が、しつけの一環で子どもに手をあげたことがあるというデータが出ています。

今国会では、児童虐待防止法の改正案として、子どもへの体罰の全面禁止に踏み込もうとしているのは、先程申し述べた通りです。

これまで親に叩かれて育ってきた人、子どもへのしつけで手をあげて育ててきた人、体罰を禁止されたらどうやって子どもを教育していくんだと言う人がいます。

そのような考え方は、元国連子どもの権利委員、前欧州評議会人権理事のトマス・ハマーベリさんの言葉で一掃されます。

 

「理に適った体罰」や「法的に容認される懲罰」といった概念は、子どもを親の所有物とする認識から生まれます。

そのような「権利」は、弱者に対する強者の力に基づいており、暴力と辱めによって維持されます。

 

40年前、スウェーデンでは50%以上の親が子どもへの体罰を行っていましたが、

1979年に親子法改正を行い、世界で初めて子どもに対する体罰と心理的虐待を全面禁止する法律が作られました。

それから10年も経たずに子どもへの体罰は30%に減り、40年経った今では、子どもへ体罰を行う親は数%程度にまで減少しました。

それまでの当たり前は、変わってしまった後は、ただの過去になります。

 

スウェーデン政府の調査では、

家庭で大人から叩かれている子どもの35%が、誰かにいじめられたり、人をいじめていたりすることが分かっています。

さらに、スウェーデンは先進国の中で最もいじめが少ない国になりました。

 

「子どもを叩かない国」スウェーデンから学べることは、

子どもへの体罰を禁止することで、暴力の連鎖を断ち切ることができること。

体罰がなくなることによって、学校や社会におけるいじめをなくすことができること。

そして、40年前のスウェーデンと同じような今の日本も「変われる」ということです。

 

しかしながら、ただ法律を改正するだけでは、物事は大きく動くはずがありません。

これまで日本が児童の権利を守るためにと行ってきたことは、国際条約に批准だけして、国内法整備は行わず、啓発だけを行うといった最も弱々しい行動だけです。

これまでの当たり前を変えるためには、ただ法整備するだけでも、ただ啓発するだけでもなく、法整備と連動した啓発が必要であると考えます。

実際、40年前のスウェーデンでは、子どもへの体罰を全面的に禁止する法改正が行われた後、法律と体罰の全面禁止を浸透させるために、全ての牛乳パックに「叩かなくても子育てはできる」と印刷をするキャンペーンを展開しています。

これはスウェーデン政府が行った啓発キャンペーンですが、日本政府だけでなく、自治体としても徹底して取り組むべきものだと考えます。

児童虐待死事件を背負っている目黒区だからこそ、強いメッセージをもって、子どもへの体罰をなくす啓発キャンペーンを行っていただきたいと思っています。

 

児童相談所には主に、子どもを保護する家庭への「介入」と、家庭への「支援」の2つの機能がありますが、今回の法改正の方向性は、子どもの安全の確保を躊躇なく行えるようにという視点から、介入機能を強化する側面が強いものです。

今年2月、国連子どもの権利委員会から日本政府に対して出された子どもの権利条約に関する勧告では、今日本政府が打ち出している介入機能の強化というよりは、実は家庭への支援機能を充実させるべきだというものが大半でした。

児童相談所に弁護士や医師、心理職や福祉職といった専門職の配置・育成は不可欠です。

その準備段階として、目黒子ども家庭支援センターでの人材育成や研修などが進められていくことと思います。

ですが、児童相談所と子ども家庭支援センターとは、それぞれに役割の違う横並びの同等の機関であり、将来的に目黒児童相談所と目黒子ども家庭センターの体制で諸課題に取り掛かっていくとすれば、子家センでは支援機能の充実・拡充に力を入れていただきたいですし、今それが求められる方向性であろうと私は考えています。

 

目黒の明日を担う子ども達への支援は、そのまま目黒の発展へと繋がっていくはずです。

国でもなく都でもなく区民に一番身近な区だからこそ、区民に寄り添った行政を、そして子どもたちに寄り添った行政を展開していただくことを強く要望し、私、竹村ゆういの賛成討論と致します。

 

4年間ずっと、子どもの権利を守るための想いを訴え続けてきました。

悲しい出来事や悲惨な事件から子どもたちを守れるは、私たち大人の役目です。

そして、人々に一番身近な自治体こそが、率先して子どもたちに手を差し伸べてあげなければなりません。